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ココロバランス
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サードプレイスの作り方|家と職場の往復に、第3の居場所を足す手順

目次

家と職場の往復。それ以外に行く場所がない、という生活があります。

これは、それ自体が問題なのではありません。仕事と生活を回すだけで手一杯な時期は誰にでもありますし、そこに趣味の場を足せていないことを責める必要もない話です。

ただ、もう一つ通う場所があると、心の面で効くらしいことが分かっています。追加すると効く、という話であって、いまが足りていないという話ではありません。 その前提で、大人が現実的にどう作れるかを整理していきます。

サードプレイスとは、どういう場所か

「サードプレイス(第3の場所)」は、社会学者のレイ・オルデンバーグが1989年の著書で提唱した言葉です。第1が家、第2が職場や学校、そのどちらでもない第3の場所を指します。

オルデンバーグが挙げた特徴は、おおよそ次のようなものです。

  • 中立地帯であること。義務も招待もなく、来ても帰っても構わない
  • 地位を持ち込まない。肩書きや収入で扱いが変わらない
  • 会話が主な活動である
  • アクセスしやすい。行こうと思ったときに行ける
  • 常連がいて、場の雰囲気をつくっている
  • 目立たない。特別な設えを必要としない
  • 遊び心がある。深刻さが支配しない
  • 家のようにくつろげる

サードプレイスは、家庭と職場のいずれでもない、非公式な社交のための場所を指す。そこでは肩書きや社会的地位がいったん脇に置かれ、会話が中心の活動となり、常連の存在がその場の空気をつくる。

出典:Project for Public Spaces「What is a Third Place?」open_in_new

読んで分かるとおり、条件はかなりゆるいものです。おしゃれである必要も、意識が高い活動である必要もありません。行きつけの定食屋や銭湯は、この定義にきれいに収まります。

なぜ「もう一つの場所」が効くのか

心の支えと所属の関係については、規模の大きい追跡研究があります。

5,055人を2年間追跡した研究では、抑うつ・年齢・性別・経済状況・健康状態などを統制したうえで、すでに抑うつ状態にある人において、所属する集団を1つ増やすとその後の再発リスクが24%低く、3つ増やすと63%低いという関連が報告されています。

ここは正確に読む必要があるところです。これは「誰にでも当てはまる予防効果」を示したものではなく、すでに落ち込んでいる状態にある人を対象にした結果です。健康な人が所属を増やせば同じ幅で何かが良くなる、とまでは言えません。

もう一つ、臨床試験の結果があります。孤独感と臨床的に有意な抑うつ症状を抱える15〜25歳174人を対象に、社会的なつながりを作り直すプログラム(Groups 4 Health)と認知行動療法を比較した非劣性試験では、抑うつ症状への効果が認知行動療法に劣らず、孤独感については上回っていました。

つまり、居場所をつくることは「気晴らし」の位置づけではなく、心の状態そのものに関わる介入として検証されている、ということです。この分野の研究がどこまで言えてどこから言えないのかは、「心の分散投資」を検証した記事でまとめて扱っています。

ただし、通っているだけでは足りない

ここが、この話でいちばん取り違えられやすい部分です。

アイデンティティに関する研究では、所属の積み重ねが well-being を高めるのは、その所属が他者から承認されている場合に限られると報告されています。自分だけが「ここが自分の居場所だ」と思っている状態では効きにくく、承認されないまま所属だけが増えると、かえって well-being が下がることも指摘されています。

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居場所と習慣の違い

一人で完結する活動——睡眠、筋トレ、読書、散歩——は、心を整えるうえで役に立ちます。ただしそれは習慣であって、ここで言う居場所とは働き方が違います。居場所として効くには、その場にいる誰かから「この人はここにいる」と認識されている必要があります。

同じジムでも、黙って通って帰るだけなら習慣、受付や常連と顔見知りになっていれば居場所寄り、という分かれ方です。

言い換えると、目指すのは「たくさんの人と親しくなること」ではありません。誰か一人からでも、顔と存在を認識されている状態です。そこまで行けば、条件としては満たしています。

大人がサードプレイスを持ちにくい理由

持てていない人が多いのは、意志の問題ではなく、条件の問題です。

まず、時間が定期的に空きません。子どもの頃は部活や教室が時間割に組み込まれていましたが、大人の予定は仕事と家庭の残りで決まるため、「毎週この曜日のこの時間」を確保すること自体が難しくなります。

次に、入口の敷居が高くなっています。新しいコミュニティの多くは初心者を歓迎していますが、外から見ると出来上がった集団に見えます。すでに関係ができている輪に、途中から入る形になるためです。

そして、「今さら始めるのは」という感覚があります。年齢や経験のなさが引っかかる、という声はよく聞きます。

どれも自然な引っかかりで、無理に押し切るようなものでもありません。ただ、この3つを避けて通れるやり方ならあります。

ゼロから探さない — すでに行っている場所を育てる

新しい趣味を始める、知らないコミュニティに申し込む。そういう始め方は負荷が大きく、続かないことが多いやり方です。

もっと現実的なのは、すでに月に何度か行っている場所を出発点にすることです。行きつけの店、通っているジム、近所の図書館、たまに行くライブハウス。ゼロから1をつくるより、1を育てるほうが楽です。

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    すでに行っている場所を書き出す

    月1回以上、義務ではなく自分の意思で行っている場所を思い出します。3つも出れば十分で、1つでも構いません。

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    同じ時間帯に繰り返し行く

    ここがいちばん重要です。人に覚えられるかどうかは、通った回数よりも、同じ時間帯に居合わせた回数で決まります。週末の昼にばらばらに行くより、毎週木曜の夜のほうが早く顔を覚えられます。

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    席や立ち位置をだいたい固定する

    同じカウンター、同じマシン、同じ棚の前。場所が一定だと、相手の側からも認識しやすくなります。

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    挨拶だけ返す

    会話を始める必要はありません。声をかけられたら返す、目が合ったら会釈する。それだけで、認識される側の条件は満たされていきます。

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    3か月ほど様子を見る

    変化はゆっくり起きます。すぐに何も起きなくても、通う頻度と時間帯が一定なら、それで進んでいます。

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増やすなら、頻度より規則性

月4回ばらばらに行くより、月2回でも同じ曜日・同じ時間のほうが「常連」に近づきます。回数を増やすのがしんどいときは、行く回数ではなく行くタイミングをそろえるほうから手をつけると負担が少なくて済みます。

候補になりやすい場所

思いつかない場合の手がかりとして、類型を挙げておきます。すでに接点があるものが1つでもあれば、それが最短の候補です。

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飲食・喫茶

いちばん敷居が低い

  • カウンターのある店
  • 行きつけの定食屋・居酒屋
  • 個人経営のカフェ
  • 銭湯・サウナ
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体を動かす場

習慣から居場所へ

  • ジム・ヨガ・格闘技
  • 社会人サークル
  • ランニングやウォーキングの集まり
  • スクール形式のレッスン
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つくる・学ぶ場

会話が自然に生まれる

  • 社会人向けの教室・講座
  • 工房・DIYスペース
  • 読書会・勉強会
  • コワーキングスペース
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趣味・推し活の現場

話す内容が最初から共有されている

  • ライブハウス・劇場
  • 同じ界隈のオフ会
  • ボードゲーム会・対戦会
  • オンラインのコミュニティ
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地域・持ち回り

顔が固定されやすい

  • 商店街・マルシェ
  • ボランティア・地域活動
  • 子ども関係の集まり
  • 同じ時間帯の散歩コース

このうち、趣味の界隈は「何を話すか」が最初から相手と共有されているぶん、入りやすい部類です。ファンコミュニティが居場所として機能する条件については、推し活仲間と居場所の関係を書いた記事で詳しく扱っています。

「常連になる」のハードルを下げる

常連という言葉には、店主と親しげに話している人、という像がつきまといます。実際にはそこまでの必要はありません。

必要なのは、相手の側に自分の存在が残ることです。名前を知られていなくても、「木曜の夜に来る人」として認識されていれば、条件としては成立しています。

会話しなくていい、と考えると気が楽になるはずです。話し好きでない人でも、通う時間帯を一定にするだけで、この位置には近づいていけます。

edit_note

今週やることを1つに絞るなら

今月すでに行った場所を1つ思い出して、次に行く日時を先に決めてしまう。それだけで構いません。新しい場所を探すのは、この1つが定着してからで間に合います。

合わない場所は、やめていい

通い始めてみて、しんどいと感じることもあります。空気が合わない、話題についていけない、行くこと自体が義務になっている。

その場合は、離れて構いません。通った時間を惜しんで居続けても、支えとしては働きません。 合わなかったことは、選択の失敗ではなく、その場所についての情報が一つ増えたということです。

1つに絞る必要もありません。複数あるほうが、どこかが合わなくなったときに逃げ場が残ります。ただし、これは「複数持たないといけない」という意味ではなく、複数あっても構わないという程度の話です。

そして、こうした場所が効いてくるのは、心が揺れそうな日が来たときです。その日に向けて手持ちを確かめておく考え方は、心が揺れる日に備える記事にまとめました。

ココロバランスがやっていること

ココロバランスでは、行きつけの店や通っている場も、職場や家族と同じ枠で居場所として登録できます。趣味の欄に分けたり、格下として扱ったりはしません。

登録した数を数えて評価することもしません。何本あれば十分という基準は存在しないためです。やっているのは、揺れそうな日が近づいたときに「自分にはこれがある」を思い出せる形にしておくこと、そして週に1回30秒だけ、いまの状態を確かめられるようにしておくことです。毎日の記録は求めていません。

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つらさが続くとき

孤独感や気分の落ち込みが長く続く場合は、一人で抱えずに専門機関にご相談ください。厚生労働省のこころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)や、相談先をまとめたまもろうよ こころから探すことができます。

参考文献

よくある質問

サードプレイスは、いくつ持っていればいいですか?expand_more

決まった本数はありません。研究で示されているのは所属の数と心の状態の関連であって、何個そろえれば合格という基準ではないためです。ゼロの人が1つ持つことに意味がある、という程度に受け取っておくのが実際的だと思います。数えて自己採点する方向に進むと、かえってしんどくなりがちです。

人見知りで、その場の人と話しかけられません。expand_more

会話ができなくても構いません。効いているのは、話した量ではなく、そこにいる人から自分が認識されている状態のほうです。同じ時間帯に何度か顔を出していれば、話さないまま顔を覚えられることは普通に起こります。挨拶や会釈だけで止めておいても問題ありません。

ジム通いや読書は、サードプレイスになりますか?expand_more

一人で完結しているうちは、居場所というより習慣に近い位置づけになります。習慣にも十分な価値がありますが、研究で心を支えると報告されているのは、他の人がいてその中に自分がいると認識される場のほうです。同じジムでも、常連やスタッフと顔見知りになっている場合は話が変わってきます。

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ココロバランス編集部

心理学・行動科学の公開研究や書籍を参照しながら、日常で実践しやすいセルフケアの知恵をまとめています。強い不調が続く場合は、自己判断だけに頼らず医療機関や専門家にご相談ください。

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